施工不良・瑕疵を無償で直させる~過去の無償改修事例から~

建物の施工不良や設計不備を施工会社と交渉して、無償で本来の建築にやり直してもらった案件を事例ごとに紹介していくコーナーです。

第1回配信 「工期がなくなり無理したケース」

3階建ての鉄筋コンクリート造アパートでした。 契約の工期内で完了できず、延長申請した工期の2週間前にもかかわらず2階までのコンクリート打設しか済んでいない状況でした。その後、3階のコンクリートを打設してわずか12日後に引き渡しを打診された建物がありました。

しっかり強度が出ないうちに型枠を外された建物。充分な乾燥期間を設けずに、施工された防水。
仕様書の存在を忘れたかのような仕事ぶりの業社は他にもいろいろな瑕疵をしていました。
依頼は引き渡し打診の1ヶ月でした。

躯体の問題

現況 3階の梁や耐力壁、開口部にひび割れが発生していました。
ひび割れ幅は、場所によっては0.4mmになっていて、外壁からの漏水も確認されました。
問題点 3階のコンクリートを打設後、翌日には壁面の型枠を外し、12日後には完了検査を受けています。
解説 型枠の取外しは、型枠の最小存置期間を経た以後に行ないます。
その型枠の最小存置期間は、コンクリートの材齢又はコンクリートの圧縮強度により定めます。
コンクリートの材齢による場合、せき板の最小在置期間は、部位が、基礎、梁側、柱、壁で、セメントの種類が、普通ポルトランドセメントの場合、在置期間の平均気温が15℃以上で3日、5℃以上で5日、0℃以上で8日となります。
コンクリートの圧縮強度による場合は、セメントの種類及び気温に関係なく、圧縮強度が5N/mm2以上となるまでと規定されています。
梁下の場合は、セメント及び気温に関係なく28日です。
梁下の場合は、さらに圧縮強度が設計基準強度(100%)以上であり、かつ、施工中の荷重及び外力について、構造計算により安全であることが確認されるまでとなっています。
改修内容 業者は所定より早い梁の型枠外しの時期に合わせて、強度試験だけは実施していました。
その数字が設計強度をぎりぎり超えていたため、解体という最悪の選択はせずに済みました。
しかしながら、各所のひび割れは構造ひび割れの範疇のため、エポキシ樹脂注入での改修を計りました。
外壁のひび割れ部分に機械式低圧エポキシ樹脂を注入してもらいました
耐力壁のひび割れ部分に機械式エポキシ樹脂を注入してもらいました

防水の問題

現況 屋上・ルーフバルコニーのウレタン防水に多数の膨れが発生していました。
問題点 今回選択されているウレタン系塗膜防水の密着工法は、躯体に水分の懸念がある場所には不向きとされています。
解説 ウレタン防水の膨れの原因は、コンクリート内の含有水分が多量に残っているうちに防水層を施工したため、行き場を失った水分が水蒸気となって防水層を持ちあげた結果と推察されます。
躯体の水分によって再度膨れをおこさないようにするためには、ウレタン防水の密着工法を避け通気緩衝工法の採用が望まれます。
たくさんの膨れが発生したウレタン防水の表面です
通気シートを貼り、通気緩衝工法にてウレタン防水をやり直してもらいました
現況 ルーフバルコニーのウレタン防水は、壁面に接したところで防水が終わっています。
問題点 壁面取り合い部分に、ウレタン防水の立ち上がりがありません。
解説 防水層は、一般的に100mm以上の立ち上がりをもって完成させます。
防水が入り隅で終わっていて、防水立ち上がりがありません
躯体の高さ100mmの位置に目地を設け、そこまでウレタン防水を立ち上げました
現況 コンクリートの打ち継ぎ部分に、ひび割れが生じています。
問題点 打ち継ぎ部分に目地が設置されていない箇所があります。
解説 コンクリートの打ち継ぎ部分はコンクリート同士が肌別れしています。
コンクリート中に止水板を入れ、表面部分には目地を設置しシールを打つようにしないとそこから漏水してきます。
コンクリート打ち継ぎ部分に目地がなく、ひび割れが発生しています
打ち継ぎ部分に目地を設け、シール打ちをさせました
現況 サッシ周りのシールは、幅が50~55mm、厚みが5~6mmとなっています。
問題点 10年の保証のためには、幅は40mm以下、深さは10mm以上ないといけません。
解説 サッシ周りの目地は目地の動きが小さいノンワーキングジョイントです。
その場合、変性シリコン系では目地幅は最大で40mm、深さは最低でも10mmとされています。
(「シーリング防水保証のための条件書」日本シーリング材工業会件編)
厚みが6mmほどしかないシールでした
サッシ枠にブリッジ工法でシールを厚塗りしてもらいました