施工不良・瑕疵を無償で直させる~過去の無償改修事例から~

第3回配信 「所定の鉄筋が入っていなかったケース」

鉄筋コンクリート造の建物には、外壁のひび割れは付き物です。しかし、診断依頼のあった建物はひび割れの形状が特異でした。
気になったのは、築2年に満たない建物なのに、ひび割れから現出している白華の量が半端ではなかったことです。そのため、鉄筋コンクリート躯体の構造欠陥を疑いました。行った検査はX線による鉄筋検査と、コア検体のコンクリート圧縮強度検査でした。その結果、コンクリート強度は充分な値でしたが鉄筋検査において当方で指定した開口部のひび割れ3ヶ所中2ヶ所で不具合が見つかりました。

何と鉄筋が広範囲にわたって配筋されておらず、無筋コンクリート部分がひび割れていたのです。原因は型枠大工が排煙窓の位置を当初より低く造ってしまい、正規な位置に窓を移動したものの窓の下側に配筋しないまま、型枠を完成させたことにありました。

また別な開口部ではコーナー部分に入れるべきひび割れ防止筋が入っていませんでした。そのため、建物内のすべての開口部の鉄筋検査をおこない、多い棟では50%近い確率でひび割れ防止筋の入っていない開口部が存在する事が判明しました。

事例1

現況 サッシ開口部に大量の白華を伴ったひび割れが発生しています。
問題点 該当壁面には所定の鉄筋がありません。
解説 サッシの位置を変えた際に、サッシ下側の壁面に鉄筋を入れずに、型枠を完了させたようです。同様の処理をした場所が3か所ありました。無筋コンクリートのため、引き渡し早々に構造ひび割れを引き起こしました。
改修内容 無筋コンクリート部分を壊し、残した壁の鉄筋に壁筋を溶接して正規の鉄筋を組み上げました。型枠後、
コンクリートを打設し仕上げました。
サッシ開口部に斜めにひびが入り、大量の白華が現出していました
無筋コンクリート部分を壊し、残した壁の鉄筋に壁筋を溶接して正規の鉄筋を組み上げました

事例2

現況 建具などの開口部に斜めのひび割れが発生しています。
問題点 開口部周りに所定の開口補強筋がありません。
解説 開口部は、斜めにひび割れが発生しやすいため、開口補強筋を設置します。しかし、図面で指示がありながら、その鉄筋が入っていない開口部が相当数存在しました。当然のことながら早期にひび割れが発生してしまいました。
改修内容 すべての開口部をX線照射もしくはRCレーダーでの非破壊検査を行い開口補強筋が入っていない箇所に炭素繊維シートを表面に張り補強を図りました。
サッシ開口部です。
斜めにひび割れが生じ、白華が出ています。鉄筋検査の結果、開口補強筋が入っていませんでした。
使用した炭素繊維シートです
開口補強筋のない箇所に炭素繊維シートを貼りました

事例3

現況 共同浴場の洗い場の床石目地が白華していました。
問題点 浴槽の立ち上がりに防水が施されていないため、浴槽内のお湯が洗い場床石の下に浸み出していました。
解説 防水効果のあまりない化粧石積みだけで、立ち上がりを完成させました。本来、下図のように浴槽の立ち上がりに防水を施さなければ、お湯が浸み出すのは当たり前です。
防水が入り隅で終わっていて防水立ち上がりがありません
改修内容 化粧石を取り除き、防水下地の立ち上がりを鉄筋コンクリートで造り、それにアスファルト防水を施し保護モルタル塗り後に化粧石を積みました。
洗い場の床石目地に白華が出ていました
鉄筋コンクリートで立ち上がりを造りました
防水後に石を積んで完成させました

事例4

現況 軒天の際から白華跡が発現しました。
問題点 天井裏のコンクリート面に断熱がされていませんでした。
解説 天井裏コンクリート面に断熱がされていないためコンクリート面に結露を起こし、割れが入っていた躯体に白華が起き軒天の際から漏れ出したようです。
改修内容 軒天を下地ごと外し、コンクリート面に発泡ウレタンにて断熱を施し、その後、軒天を再度作りました。
軒天を一旦撤去しました。
断熱がない事を確認しました。
その後、発泡ウレタンを吹付け断熱をしました。