建築の第三者機関からのアドヴァイス

住宅新築工事

どんな工法がいいのか?

その建物の用途・予算・建築法規によって、木造(在来工法・2×4工法・ログハウス)、鉄骨造(軽量鉄骨造・重量鉄骨造)、鉄筋コンクリート造(ラーメン構造・壁式構造)、鉄骨鉄筋コンクリート造を選択しなくてはいけません。

住宅を新築する場合を例にとって、工法の選択をシュミレーションしてみましょう。用途が「専用住宅(自宅)」の場合、工法の選択でまず優先されるべきは改築がしやすい工法です。なぜなら自宅の場合は、そこに住む人間の数が時とともに変化するからです。その住む人間の数の変化に対して、必要な改築が制限されるような工法は避けるべきでしょう。

例えば、木造であれば壁や床が構造体である2×4工法、鉄骨であれば柱の肉厚が薄くてそのためにブレースで壁や床を補強せざるをえない軽量鉄骨造、鉄筋コンクリートであれば壁でもたせている壁式構造などは改築の際に、壁や床を自由に外すことがほかの工法に比べ著しく制約を受けます。そういった工法はできるだけ避けるべきと思われます。

もちろん木造2×4工法には、耐火・耐震で木造在来工法より優れた特性があり、それを優先して工法を選択するということはあり得ます。ただ最近の木造在来工法でも、壁や床にコンパネを多用し2×4並みの耐震性能を確保しているケースや、鉄梁を一部使用して広い空間を造ることに成功している場合もあり、工法の名前だけで判断するのは早計と言えるかもしれません。

次に優先されるべきは日本の風土に合った工法を選択することです。高温多湿のわが国の気候に無理がない工法かどうかを検証してみましょう。湿気の少ない国で生まれた工法は、構造体そのものがどこまで耐久性があるのかを営業マンの受け売りではなく、ご自身の感性で判断してみてください。納まりの工夫で自然循環換気を行い構造体の延命を図っている工法は、風土に適した工法といえるでしょう。

用途が「共同住宅(アパート・賃貸マンション)」は収益物件ですので、かかる建築費用と耐用年数が選択基準と言えるでしょう。建築の費用は、木造や軽量鉄骨造が廉価ですが耐用年数は24年と短く、借入金で計画を進める際には元本回収時期を早くする必要があります。両構造とも共同住宅の場合は、3階建てまで認められています。グループホームなどの用途では、過去の火災経験から木造は採用されないため軽量鉄骨造をお勧めします。

ハウジングメーカーの見極め方

日本にはいろいろな分野から派生したハウジングメーカーがあります。共通するのは、自分の分野の商品販路拡大が当初の目的であったことです。商社関連ハウジングメーカーは、輸入することがそもそもの業務ですので、2×4工法やログハウスを手掛けています。鉄材メーカーやコンクリートメーカー、スレートメーカーは自社製品を工法に巧みに取り入れています。後発メーカーは、設計があたかも主業務であるかのようなネーミングや、有名タレントを起用して信用度を演出しています。そして住宅展示場を設置し、言葉巧みに工法の優位性や安全性を説いています。

しかしながら、ハウジングメーカーというものの共通体質を見極めることで、その神話は虚構の部分もあると感じてください。彼らはいかに安く建物を製造できるかをとことん突き詰めて、供給体制を構築しています。すなわち構造材や厨房セット、ユニットバス、クロスやフローリングに至るまで種類を徹底的に絞り、協力メーカーに年間予約することで安く造ることに成功しました。安さは発注者にとっても一部還元はされますが、住宅の場合は多種多様な要求があるのが一般的です。しかし、それらのすべてに応えていては廉価の目的が遂げられません。わかりやすい表現で説明すると、ハウジングメーカーの製品はファミレスの食事と同じで100点満点の70点程度の出来は期待できます。それ以下はあり得ませんが・・・それ以上も期待してはいけません。ですから、建設会社や工務店に知り合いのいない人、建物や生活スタイルにあまりこだわり人はハウジングメーカーにお願いするのが無難です。

坪単価が安い、というのもハウジングメーカーの魅力の1つです。しかし、本当に安いのでしょうか。ハウジングメーカー同士は、坪単価の定義を決めています。それぞれの会社の定義が違うと比較ができなくなるからです。すなわち、以下の工事は坪単価の中に含まないとしています。

  • 照明器具
  • 空調工事
  • 家具工事
  • カーテンやブラインド
  • 外構工事
  • 建物周囲1m以上離れた配管工事
  • 解体工事
  • 各社が決めた標準仕様以外

これだけの工事が省かれているため、坪単価は安く提示されます。しかし、実際の建築工事が始まればハウジングメーカーの都合上計上されていなかったこれらの工事も、やらなくては住めません。木造であれば、坪あたり65~70万円は実際かかることになります。予算的にはその位をみていないと、後からあわてることになります。

工務店の見極め方

名前が知れているハウジングメーカーと違い、工務店に安心して発注する線引きがわからない方が多いと思います。紹介者がいた、社屋がりっぱ、営業マンが熱心・・・どれもありがちなケースですが、本当にその程度で1000万単位の発注をしていいのでしょうか。建築が専門用語だらけでわかりにくいというのは理解できます。ですが、専門家が作るのだから間違いはないはず・・・などと自分に甘い理屈を考えて、あえて勉強してみたり調べてみたりする努力を放棄している人が多く存在します。

紹介者がいても、社屋がりっぱでも、営業マンが熱心でも・・・その建築会社のことをしっかり調べてみてください。
住宅を依頼しようと考えている業者さんが、実は住宅が得意ではないかもしれません。
鉄骨造をお願いしようとしている建築会社が、木造以外の知識があまりないかもしれません。
建築会社を名乗っているけれど、実体はマージンを取るだけの不動産会社であるかもしれません。
建築という分野も、お医者さんや弁護士さんと同様にそれぞれの会社に専門・得意分野があり、それ以外はそこそこの知識しかない場合もあるという現実を知ってください。目の相談に内科に行きますか?お医者さんが内科の先生しかいなければ仕方ないでしょうが、普通は目の相談には眼科の診療所を探します。建築も同じ事です。では、どうやって調べたらいいでしょうか。

ひとつに、建築会社の本社が存在する県庁に足を運び、調べてくる方法があります。そこの建築課(建政課の場合もあります)に行けば、建築会社の建設業許可申請を閲覧できます。なぜかどこもコピーができないので、書き写し取るしかないので面倒ですが、過去3年分の以下の内容が掲載されています。

  • 会社役員の出身・経歴
  • 工事実績(発注者名・物件名・工事場所・発注金額・現場監督者名・工期)
  • 従業員数
  • 決算内容(損益計算書・貸借対照表・資本の内訳)

これらのデータを持ち帰り、よくよく眺めてください。数字やデータの意味するところがわからない場合は、税理士さんや銀行マン、経営が少しでも分かる方などにお聞きになってください。その会社の営業マンが持ってきたパンフレットの内容と、それらのデータが同じであれば誠意ある会社と認識できます。違う場合はその内容にもよりますが、その会社には別な顔がある可能性は考えたほうがいいでしょう。